オーロビル

mura_chourou2008-12-12

持続可能な社会づくりをテーマに月イチペースで行われる勉強会スマイルレボリューションスクール、
通称スマレボがいつもの様に藤本記念館で行われた。


VOL.9の今回のテーマはエコビレッジだ。


南インドにある世界最大のエコビレッジといわれる「オーロビル」を
去年現地へ取材に行ったライターの澤田佳子さんにレポートしてもらった。


1968年に始まったそのプロジェクトは今年で40年目をむかえ、
今では2000ヘクタールに約1700人が暮らす国際コミュニティーになっている。
そこは第二次大戦中にピーナッツオイルを生産するためのプランテーションにされ、
その後、丸裸の荒地となっていた土地を買い上げ木を植えるトコロから始めたという。
それが今では驚くほど豊かな森になっている。


ヨギであり革命指導者であったスリ・オーロビンドのアシュラムにいたフランス人女性マザーが
オーロビンド亡きあと、アシュラムの近くにあったその土地で理想郷作りに着手した。
しかし創立者のマザーも数年後にこの世を去り残ったのは彼女の記したオーロビル市民憲章と夢と題された詩だけである。
この理念に基づき、世界中から沢山の人が集まり進化発展し現在まで続いてこれたのはひとつの奇跡と言えよう。

しかしこのような理想郷づくりは、昔から世界中のいたるトコロで試みられて来た。
日本では武者小路実篤の「新しき村」や「ヤマギシ会」、それにヒッピー達のコミューン運動。
インドのガンジーが行った「スワラージ運動」の村づくり。
ドイツのルドルフ・シュタイナーの思想「人智学」に基づいた共同体づくり。
ヨーロッパからアメリカに渡った「アーミッシュ」や「シェーカー教団」の共同体。
イスラエルの共同体「キブツ」や、ロシアの文豪トルストイの村づくり等、あげればキリがないほどである。


この数千年続いて来た、ボクらの文明は病を抱えている。
その病は現代においても変わることなく人々の心に、生活に、社会に蔓延しますます広がっている。


古今東西の思想家、宗教家、芸術家、革命家、理想家はこの人類の病を乗り越えようと、
それぞれの風土で、それぞれのやり方で、愛と自由と平等を求めて試みて来た。


そして失敗し消えて行くものもあり、続いて行くものもある。
しかしグローバル経済が地球全体を破壊する現代において、
そのムーブメントは、全世界の市民レベルで急速に広がっている。


インターネット時代の現代は、その機能を生かしGEN(グローバル・エコビレッジ・ネットワーク)という
横のつながりをつくり世界中のオルタナティブな市民の連携を始めている。
現在、世界には大小さまざまで多種多様なエコビレッジやコミュニティが生まれているが、
インドのオーロビルはその中で最も大きく成功しているひとつであろう。


この共同体がうまく機能している理由には、もちろん外貨を持ってインドで生活することの
経済的優位性もあるだろうが、なんといっても個人の自由と共同体の共有のバランスがよいのではないかと思う。
ここではマザーの理念に共鳴した個人が、国籍を越えその理念を共有し、同じ理念からずれなければ、
かなり個人の自由がある様に感じられる。


個人の自由7に対して共同体の共有3ぐらいだろうか?一人ひとりはゆるやかにつながっているが
精神的な結束は固いというスタイルで、そこが長続きするコツなのではないかと感じた。


10年前アジア・ヨーロッパ放浪中に、僕も数日間だけオーロビルを訪れたコトがある。


スクーターをレンタルしてオーロビルを走っていると広大な森の中にインドらしからぬモダンな建物が点在していて、
まるでオーロビル全体が実験的なアートのようにも感じられた。
モダンと言っても現代建築のコンクリートで無機質な感じではなく、
地元素材のレンガや石や木を使った建物は南インドの風景に良くマッチしていた。

さながら洗練されたプリミティブな村という感じだ。
唯一ぶっ飛んでいる建築物はオーロビルの中心にある瞑想センター「マトリマンドール」である。
それは宇宙から忽然と巨大な黄金の球体が森のなかに舞い降りた様でなんだかとてもスペイシーである。
でもオーロビルの都市計画はギャラクシー(銀河)をイメージして設計されているので、これもうなづける。
暮らし方もそれぞれ自由で、仲間達と共同住宅に住んでいる人もいれば個人で住んでいる人もいて、
自分の好みのスタイルで暮らしているようだ。
そしてここでは芸術活動がさかんであり、ありとあらゆるワークショップが開かれている。
音楽、ダンス、絵画、伝統工芸、言語、環境デザイン、植林、ヨガ、ホメオバシー、フラワーエッセンス、メディテーション等々。
自治体機能は民主制で森の中の小さな円形劇場のようなオープンスペースで話し合われ、役員は2年で交代するそうだ。
そしてここではあまり現金は使われず使った分をサインして毎月清算するシステムだという。
オーロビル内にいくつかある学校はモンテッソーリシュタイナー教育などオルタナティブな教育が行われ、
風力、太陽光、バイオマス等、可能な限り自然エネルギーが利用され、パーマカルチャーや福岡式自然農が実践され、
オルタナティブなありとあらゆる要素が試みられている。


これだけ大きな共同体の運営となるとそれだけ苦労も多く大変なようだがここはある意味で地球における
持続可能な未来社会のモデルとしての役割をになっているのではないかと思う。
実験都市であるオーロビルをそのまま自分の暮らす土地へ持ってくるのは無理な話しであるがヒントはたくさんある。


ここ、安房や鴨川地域と似ているトコロは個人の自由とコミュニティの共同のバランスがちかいのではないかと思う。
ココは安房南房総全域)という広い地域に個人がそれぞれ好きなトコロに住み、固まらず点在し、
自由なライフスタイルで自立独立し、オルタナティブな価値観を共有する意識でつながる「意識のコミュニティ」と化しているからだ。
現代のエコビレッジやコミュニティ運動の性質の一つにグルや教祖のいない共同体作りが特徴と言えるのではないだろうか。
精神的リーダーは必ずいるが、かつての宗教組織のようなピラミッド型の階級制度ではなく、
NPO的なフラットで民主的な輪がたくさんネットワークしている曼荼羅型であるように思う。


安房オルタナティブな意識のコミュニティは地域通貨安房マネー」によってたくさんの輪がネットワークされている。
NPO法人うず、T&T研究所、鴨川自然王国、エコウィンド、三芳自然塾、あわのわ、awaourファーマーズマーケット
テトラスクロール、安房地人会、他にも子育ての輪、有機農の輪、ヨガの輪、サーファーの輪、アーティストの輪等
多種多様な輪がネットワークされひとつの曼荼羅が構成されている。そのネットワークの中の一つの輪がアクションをおこすと、
そのアクションに反応する輪がリンクし合い新しい曼荼羅を構成し、そして新しい風を起こすのだ。
これは未来社会の雛形なのではないかと僕はイメージしている。


地球が持続可能で平和な「生命調和文明」築くことが出来るならば、
もう巨大な権力と富が集中する大都市をつくることなく、自然と調和した小さなコミュニティが
フラットにネットワークした社会になるだろう。地球上のそれぞれの風土文化に合ったオーロビルのような
緑あふれるコミュニティが全地球規模でつながる時、国境は消えて無くなるだろう。


気高く美しい詩が世界を変える原動力となるコトもある。マザーが書いた詩「夢」を
マザー自身が生きた様にボクらも自分自身の気高く美しい夢を生きよう。
今、ここ、安房で。